春の靴下4枚重ね
長野の冬は長い。
思い出したかのような冷気。ある朝、夫を送り出した直後、体調が悪くなった。
数日前から、パジャマの下の肌着をやめていた。日中は、ダウンコートではなく、買ったばかりのトレンチコートを着ていた。「春っぽさ」に浮かれていた。
外はすっかり春の陽気。でも足先は氷のように冷たかった。冷えとり靴下を3日分ほど持っていた。昨年買い揃えたが、この冬はあまり使っていなかった。効果は抜群だが、洗濯が面倒臭い。最近はもっぱらユ○クロの厚手靴下をよく履いていた。肌のカサつきが少し気になるが他に不自由はなかった。
午後から用事があった。それまで少し寝ることにした。
しかし、本格的に布団に入ると起きられない可能性がある。そのままひざ掛けで全身を覆い、ソファーで体を丸めた。
昼になったが食欲がない。起きて少し白湯を飲んだ。体のだるさは朝よりひどくなっている。
はっと思い出し、引き出しから取り出した物。ー【葛根湯】ー 年始、夫が風邪を引いた時に買ったものだった。これこれ、とキャップをひねる。飲む前と後の自分は何かが変わったという自己暗示をかけた。
顔のむくみを隠すため、いつもより念入りにメイクをした。
夕方。なんとか用事を済ませ帰宅。関節の痛みが激しくなっていた。
風呂を沸かし1時間入浴。ジワリ、ジワリ、とこわばった体が緩んでいった。熱が冷めない内に湯たんぽを抱え、布団にもぐった。途中起きて、夫に買ってきてもらったスポーツドリンクを飲んだ。この世で一番美味い飲み物に思えた。安眠のため睡眠用イヤホンを着け再び就寝。
翌日。引き続き春の陽気。しかし朝の気温マイナス5度。体調は少し戻っていたが、気分が上がらない。ここでようやく、あの靴下を履くことにした。今使わなくていつ使う?靴下を重ね、腰まであるウールのスパッツをと腹巻き。3月とは思えない重ねっぷり。下半身だけガンダム。しかし下から暖かさに覆われる感覚は幸せだった。下半身が熱を持つと、上半身の力も抜ける。手付かずだった家事をゆっくり再開した。
最初から、こうやって着込んで入れば、昨日の体調不良はなかったのでは?なぜ、買い揃えたものを使わないのか。「バカだね〜」と心の中で呟いた。
穏やかに次の季節を迎えたい。しかし一度も上手くいかない。長野県民4年目の春。